日々の泡沫

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うみが


うみが

そらが

あすが

いまが

はるが

きょうが

すべての

かかわってきた

ものものが

おしよせてくる

わたしは

どこまで

たえきれるだろうか
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by hibinoutakata | 2008-03-18 01:02 |

あなたはだんだんきれいになる



『あなたはだんだんきれいになる』


をんなが付属品をだんだん棄てると
どうしてこんなにきれいになるのか。
年で洗はれたあなたのからだは
無辺際を飛ぶ天の金属。
見えも外聞もてんで歯のたたない
中身ばかりの清冽ないきものが
生きて動いてさつさつと意慾する。
をんながをんなを取りもどすのは
かうした世紀の修業によるのか。
あなたが黙つて立つてゐると
まことに神の造りしものだ。
時時内心おどろくほど

あなたはだんだんきれいになる。

             昭和二 ・ 一

                     ~高村光太郎 「智恵子抄」より~



智恵子抄の巻末に
高村光太郎自身が智恵子についての
手記を付している


 いよいよ食べられなくなつたらといふやうな話も時々出たが、
 だがどんな事があつてもやるだけの仕事をやつてしまはなければね
 といふと、さう、あなたの彫刻が中途でなくなるやうな事があつては
 ならないと度々言つた。
 (中略)
 二十四年間私が彼女に着物を作つてやつたのはニ三度くらゐの
 ものであつたらう。彼女は独身時代のぴらぴらした着物をだんだん
 着なくなり、つひに無装飾になり、家の内ではスエタアとヅボンで通すやうになつた。
 しかも其が甚だ美しい調和を持つてゐた。
 「あなたはだんだんきれいになる」といふ詩の中で、

    をんなが付属品をだんだん棄てると
    どうしてこんなにきれいになるのか。
    年で洗はれたあなたのからだは
    無辺際を飛ぶ天の金属。

 と私が書いたのも其の頃である。



美しいものって何だろう
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by hibinoutakata | 2008-03-08 15:32 | 詩撰集

人類の泉



『人類の泉』


世界がわかわかしい緑になつて
青い雨がまた降つて来ます
この雨の音が
むらがり起こる生き物のいのちのあらはれとなつて
いつも私を堪らなくおびやかすのです
そして私のいきり立つ魂は
私を乗り越え私を脱れて
づんづんと私を作つてゆくのです
いま死んで  いま生まれるのです
二時が三時になり
青葉のさきから又も若葉の萌え出すやうに
今日もこの魂の加速度を
自分ながら胸一ぱいに感じてゐました
そして極度の静寂をたもつて
ぢつと坐つてゐました
自然と涙が流れ
抱きしめる様にあなたを思ひつめてゐました
あなたは本当に私の半身です
あなたが一番たしかに私の信を握り
あなたこそ私の肉親の痛烈を奥底から分つのです
私にはあなたがある
あなたがある
私はかなり惨酷に人間の孤独を味つて来たのです
恐ろしい自棄の境にまで飛び込んだのをあなたは知つて居ます
私の生を根から見てくれるのは
私を全部解してくれるのは
ただあなたです

私は自分の行く道の開路者です
私の正しさは草木の正しさです
ああ  あなたは其を生きた眼で見てくれるのです
もとよりあなたはあなたのいのちを持つてゐます
あなたは海水の流動する力をもつてゐます
あなたが私にある事は
微笑が私にある事です
あなたによつて私の生は複雑になり  豊富になります
そして孤独を知りつつ  孤独を感じないのです
私は今生きてゐる社会で
もう万人の通る通路から数歩自分の道に踏み込みました
もう共に手を取る友達はありません
ただ互に或る部分を了解し合ふ友達があるのみです
私はこの孤独を悲しまなくなりました
此は自然であり  又必然であるのですから
そしてこの孤独に満足さへしようとするのです
けれども
私にあなたが無いとしたら――
ああ  それは想像も出来ません
想像するのも愚かです
私にはあなたがある
あなたがある
そしてあなたの内には大きな愛の世界があります
私は人から離れて孤独になりながら
あなたを通じて再び人類の生きた気息に接します
ヒユウマニテイの中に活躍します
すべてから脱却して
ただあなたに向ふのです
深いとほい人類の泉に肌をひたすのです
あなたは私の為めに生れたのだ

私にはあなたがある
あなたがある

                大正二 ・ 三

                   ~高村光太郎 「智恵子抄」より~



智恵子さんにお会いしてみたい
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by hibinoutakata | 2008-03-08 15:17 | 詩撰集

僕等



『僕等』


僕はあなたをおもふたびに
一ばんぢかに永遠を感じる
僕があり あなたがある
自分はこれに尽きてゐる
僕のいのちと あなたのいのちとが
よれ合ひ もつれ合ひ とけ合ひ
渾沌としたはじめにかへる
すべての差別見は僕等の間に価値を失ふ
僕等にとつては凡てが絶対だ
そこには世にいふ男女の戦がない
信仰と敬虔と恋愛と自由とがある
そして大変な力と権威とがある
人間の一端と他端との融合だ
僕は丁度自然を信じ切る心安さで
僕等のいのちを信じてゐる
そして世間といふものを蹂躙してゐる
頑固な俗情に打ち勝ってゐる
二人ははるかに其処をのり超えてゐる
僕は自分の痛さがあなたの痛さである事を感じる
僕は自分のこころよさがあなたのこころよさである事を感じる
自分を恃むようにあなたをたのむ
自分が伸びてゆくのはあなたが育つてゆく事だとおもつてゐる
僕はいくら早足に歩いてもあなたを置き去りにする事はないと信じ 安心してゐる
僕が活力にみちてゐる様に
あなたは若若しさにかがやいてゐる
あなたは火だ
あなたは僕に古くなればなるほど新しさを感じさせる
僕にとつてあなたは新奇の無尽蔵だ
凡ての枝葉を取り去つた現実のかたまりだ
あなたのせつぷんは僕にうるほひを与へ
あなたの抱擁は僕に極甚の滋味を与へる
あなたの冷たい手足
あなたの重たく まろいからだ
あなたの燐光のやうな皮膚
その四肢胴体をつらぬく生きものの力
此等はみな僕の最良のいのちの糧となるものだ
あなたは僕をたのみ
あなたは僕に生きる
それがすべてあなた自身を生かす事だ
僕等はいのちを惜しむ
僕等は休む事をしない
僕等は高く どこまでも高く僕等を押し上げてゆかないではゐられない
伸びないでは
大きくなりきらないでは
深くなり通さないでは
―何といふ光だ 何といふ喜だ

                  大正二・一ニ

                       ~ 高村光太郎 「智恵子抄」より ~
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by hibinoutakata | 2008-03-05 22:31 | 詩撰集

人に



『人に』


遊びぢやない
暇つぶしぢやない
あなたが私に会ひに来る
――画もかかず、本も読まず、仕事もせず――
そして二日でも、三日でも
笑ひ、戯れ、飛びはね、又抱き
さんざ時間をちぢめ
数日を一瞬に果す

ああ、けれども
それは遊びぢやない
暇つぶしぢやない
充ちあふれた我等の余儀ない命である
生である
力である
浪費に過ぎ過多に走るものの様に見える
八月の自然の豊富さを
あの山の奥に花さき朽ちる草草や
声を発する日の光や
無限に動く雲のむれや
ありあまる雷霆や
雨水や
緑や赤や青や黄や
世界にふき出る勢力を
無駄づかひと何うして言へよう
あなたは私に躍り
私はあなたにうたひ
刻刻の生を一ぱいに歩むのだ
本を擲つ刹那の私と
本を開く刹那の私と
私の量は同じだ
空疎な精励と
空疎な遊惰とを
私に関して聯想してはいけない
愛する心のはちきれた時
すべてを棄て、すべてをのり超え
すべてをふみにじり
又嬉嬉として

                  大正二・二

                       ~ 高村光太郎 「智恵子抄」より ~



詩は
振りだけで作れるものじゃない

その人の
体験が
経験が
想いが
噴出する場所を探して
仕方が無く
たまたま
「詩」
という形になって
顕われた

ただそれだけのこと

そのただそれだけが
でもやはりすごい

すごいとしかいいようがない

愛してるとしか云いようが無い
のと同じように
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by hibinoutakata | 2008-03-05 22:26 | 詩撰集

脳と仮想


本屋で何気なく手に取った

図らずも
おもしろい
おもしろすぎる

引き込まれて読んでいる


ある体験から心に傷を受ける、
ということを別の言葉で言い換えれば、
その体験によって生じた脳の中の神経細胞の活動によって、
脳が大規模な再編成を余儀なくされるということである。

(中略)

すぐれた芸術作品との出逢いが脳に与える作用も、
上のような身体の再組織化、再編成のプロセスと似ている。
受ける感動の深さ、大きさが、その作品に接することが
きっかけになって始まった能の再編成の
プロセスの深さ、大きさの指標になる。

(中略)

強烈な印象を残す体験を受けての再構成は、
意識のコントロールできるプロセスとして
起こるわけではない。
だからこそ、その再編成の結果生じたものに、
自分でも驚かされることがある。

そのような再編成の結果新しいものが生み出されるプロセスを、人は創造と呼ぶ。

素晴らしい経験をすると、自らもそのような何かを生み出したくなる。
適当な形で心が(脳が)傷つけられることで、その治癒の過程としての創造のプロセスが始まる。

脳は傷つけられることがなければ、創造することもできないのである。


                           ~ 茂木健一郎著 「脳と仮想」より ~



すべてを納得しながら読み
うーむと唸ってしまった

すごい

そして、無性に傷つけられたくなった



この貧弱な脳を



そんな伏線があってかどうかは
いざ知らず

昨日の帰りに無性に本屋さんに行きたくなり
目的もなく背表紙サーフィンをしていたところ
目に留まった
「智恵子抄」

衝動買いしてしまうのは
彼是これで3冊目

でもそれは
1冊目の「智恵子抄」
とも
2冊目の「智恵子抄」
とも
まるで違った



まるで違った



詩は生きものだ



そして私も
私の脳も
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by hibinoutakata | 2008-03-05 22:00 |

時不問






心に花を
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by hibinoutakata | 2008-03-04 23:53 |

老梅


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今年も我が家の
梅の木は

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一生懸命
花咲かす

もう老木で
花もまばら
満開には至らない

けれど

むしろ
清楚に
しとやかに

静かに
薫風待ちおりぬ

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by hibinoutakata | 2008-03-04 23:47 |

それは

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ふと
急に
とつぜん

なんの前触れも無く
やってきた

居心地のいい場所
居心地のいいヒト
もはや
当たり前すぎて気づかないほど
居心地のいいものものヒトヒト


離れなければならない

その空白が
迫りくる

もちろん
新しい空気に飛び込むのは
好きだし
最近わりと得意になった

昔に比べると
それはもう随分得意になった

不安はないけれど
あるのは空白

そこにまた
自由に書きこんでいく

そんな余地を与えられた感覚を
愉しみながら

空白に向き合い
耐える
今日この頃
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by hibinoutakata | 2008-03-04 23:37 |